20代の10年間へ、贈る言葉
まもなく20代が終わる。
たぶん、これからの人生の中でこの10年が1番長い。
学生から始まって、社会人になって8年。
人生の1/3という割合は、この先覆ることが無い。
10代とは違って、最初から最後まで自分の意思で考え、悩み、選び、生き抜いてきた10年間だ。
本当に色々なことがあった。
初めて一人暮らしをしたのも、初めて彼氏と別れたのも20代だった。
みんなと同じように髪を黒染めして、ダサいスーツを着て、必死に就活をした。
毎日何かしらやることがあって、一緒に笑える友達が当たり前にそばにいた。
初めてのお給料、初めての辞令。
初めての退職願も出した。
メンタルと体がぼろぼろに壊れたのも、それを取り戻したのも20代だった。
乾杯用に形だけ注いでもらっていたビールが、仕事後の楽しみに変わるくらいには長い時間を過ごしてきた。
毎日友達と笑い合えることが、全然当たり前じゃないことも知った。
健康に、何事もなく30代を迎えられることが、当たり前じゃないことをわたしたちは知っている。
でも、日常のどうでもいいことがそれをかき消していく。
仕事とか、人間関係とか、金欠だとか、ちょっと太ったとか、そろそろ部屋片付けなきゃとか、そういうことでわたしたちの毎日はすぐにいっぱいになる。
わたしは、ときどき遺言を書くことにしている。人生は急に終わるかもしれないということを、ちゃんと覚えておくためだ。
できる限り静寂の中で、できる限りリアルな気持ちになって書く。これを書いたら終わり、という気持ちになって。
遺言を書いていて悔いが残ることは、いつも2つあった。
1つは自分がやってみたいと思ったことをやらなかったこと。そしてもう1つは、愛する人に愛していると伝えなかったこと。
怖くなって、ボロボロと涙が出てくることもあった。
だからわたしは、やってみたいことはやれる限りやり、好きな人には好きと言う人生を選択してきた。
この前、20代最後の遺言を書いた。
2つの後悔は、もう出てこなかった。
わたしたちは、この10年間で、間違いなく大人になってきた。
自分で考え、意思決定をし、何かに傷ついたり、誰かを傷つけたりした。
悩んで迷って、たくさんのことに折り合いをつけて、自分という人間が確立した分、少し頑固になった。
ここに戻ってくることは、もうない。
わたしを育んでくれた、10年という時間からの卒業だ。
まもなく20代が終わる。
もう二度と戻ることができない、楽しくて、辛くて、苦しくて、幸せな10年間だ。